やる気が出ない,頑張れない君へ(進学校の中高生向け)

 勉強や学校の課題をやらなきゃいけないのに,やる気が出ない。頑張らなきゃいけないのは分かっているのに,頑張れない。早く勉強に取りかかった方がいいのに,いつまでも先延ばしにする。

 

 あなたは,こういったことで悩んでいませんか?この記事は,そんな悩みを抱える人に向けて,私自身の体験談をもとに,書きました。

 

(少し長いので,一度に読むのが大変な方は,記事を保存するか,印刷するなどしておいて,気になるところから少しずつ読んでくださいね。)

 

 また,手っ取り早く,頑張るための具体的な方法について学びたい方は,「少しでも頑張る方法」の部分から,目を通してみてください。

 

 

私の学校生活

 私自身も,進学校に入ったのに,勉強を頑張りたくても,全く勉強に手をつけることができない人間でした。高校1年生の1学期は,夜まで学校の課題を先延ばしにして,夜中に課題をやって,ふらふらになりながら学校に行っていました。

 

 しかし,夏休みに糸が切れてしまい,当時流行っていたポケモンに,逃げるように熱中してしまいました。夏休みの終わりになって,2,3日では終わらない大量の課題が残っていました。

 

 私はそのとき,課題をやらなければまずいと分かっていても,夏休みの宿題が苦しくて,どうしてもできませんでした。進学校に入ったのに,夏休みの宿題すらやらない自分が本当に恥ずかしくて,9月から学校に行けなくなりました。そこから1ヶ月間,不登校になりました。

 

 それからは,課題を出さずに先生から詰められることに,いつも怯えていました。また,学校の生徒の平均勉強時間をはるかに下回ることに,恥を覚えていました。

 

 進路集会では,こんなことを言われます。「皆さんの平日の平均勉強時間は3時間○○分,休日の平均勉強時間は5時間○○分です。皆さん,よく勉強を頑張っていますね!」そして、「勉強を頑張っている生徒」に向けて,彼らを鼓舞する言葉が並べ立てられます。

 

 「私の平均勉強時間は30分未満ですけれども。勉強を頑張れていなくて,どうもスイマセンでしたねえ。私はいない存在ですか。」進路集会では,いつもそう思っていました。先生はいつも勉強を頑張っている人に向かって話をしていて,自分はいない存在として扱われているように感じました。

 

 また,進路集会で,「勉強時間が足りない人は自分のことを見つめ直した方がいい」なんて言われるものだから,本当に憂鬱でした。

 

 同級生に「どうやって勉強のやる気を出してるの?」と聞いたら,「やる気がなくてもやってる」と言われて,途方に暮れました。同級生に「私頑張って課題やったよ!」と言ったら,「そんなの当たり前でしょ」と言われて,傷つく日々でした。当時の恋人は,悩む私に対して,「君は頑張れないんじゃなくて,頑張らないんだよ」という言葉をかけました。

 

絶対に伝えたいこと:あなたは悪くない

 まず,一番伝えたいことから伝えますね。もしあなたが,「頑張りたくないから頑張らない」のではなく,「頑張りたいのに頑張れない」のだとしたら,それはあなたが怠けているわけでも,あなたが悪いわけでも,あなたの生き方や人格に問題があるわけでもありません。


 あなたは,「頑張りたいのに頑張れない」という困難を抱えながら,ここまでなんとかやり過ごしてきたと思うのです。だからどうか,「自分はダメだ」などというように,自分のことを責めたり,卑下したりしないでほしいです。


 むしろ,自分がここまで困難を抱えながらなんとかやってきたことを,認めてあげてほしいです。今は難しいかもしれませんが,どうかこのことを,頭の片隅に置いておいていただきたいです。

 

頑張れない理由

 自分が悪くないとしたら,私たちは,いったいどうして頑張れないのでしょうか。実は,いくつかの理由で,やる気を出すことができなくなってしまうことがあります。これから,考えられる理由をお伝えします。

 

うつ状態
 あなたは,うつ病という病気を聞いたことがありますか?うつ状態というのは,まだうつ病ではないけれども,うつ病のような症状が出ている状態です。うつ状態になると,やる気や元気が出なくなったり,頻繁に憂鬱な気持ちになったり,死にたくなったり,食欲が減ったり(増えたり),眠れなくなったり(寝過ぎてしまったり,寝ている途中で目が覚めたり)します。


 ただし,うつ状態はみんな決まった症状が出るわけではありません。人によって,症状の出方が違います。「この症状がないから私はうつ状態じゃない」ということではないですからね。

 

 うつ状態は,脳の症状なので,あなたが悪いわけでも,あなたの気合が足りないわけでもありません。うつ状態の方に必要なのは,自分を責めることではなく,休養と,気分転換と,周囲からの心のケアです。

 

ADHD注意欠陥多動性障害
 ADHD注意欠陥多動性障害)とは,生まれつき脳機能の発達に偏りがあり,不注意,落ち着きのなさ,衝動性などの問題で,生活に支障がでる障害です。いわゆる,発達障害と呼ばれる障害の1つです。


 ADHDのある方の困りごととして,
・忘れ物や無くし物が多い
・遅刻が多い
ケアレスミスが多い
・集中するのが難しく気が散りやすい
・飽きっぽい
・段取りを立てるのが難しい
・感情をコントロールできずに爆発してしまう
・人が話し終わるのを待てずに話し出してしまう
・うっかり言ってはいけないことを言ってしまう
・落ち着きがなくじっとしているのが大変
・早口でしゃべり続ける
・好きな事は止められず嫌なことは頑張れない
といったことが挙げられます。

 

 あなたは,この困りごとを見て,もしかしたら,「いや,自分はそこまでではないかなあ」と感じたかもしれません。しかし,例えば忘れ物や遅刻がないからといって,ADHDではないとは限りません。うつ状態の説明でも言いましたが,「この困りごとがないから,自分はADHDじゃない」とはいえないのです。実際私も,忘れ物もしないし,遅刻もせず,むしろ友達が遅刻をしたのを待っていることの方が多いのですが,ADHDという診断がついています。

 

 「ADHDとやる気が出ないことは,どう関係があるの?」と思われた方もいると思うので,少し説明しますね。ADHDの困りごとの1つとして,「精神的努力の持続を要する課題を避ける,いやいや行う」ということがあります。やる気や根気の要る,地道な作業や面倒な作業に取り組むのが苦手,ということですね。

 

 これは,ADHDのある方には,脳の報酬系と呼ばれる部分に偏りがあることが原因だとされています。報酬系に偏りがあると,ごほうびがもらえるのがすぐではなく少し先であったり,未来に向かってコツコツ頑張らなければならなかったりすることに取り組むことが,人の倍難しくなります。これは脳の仕組みの問題であり,本人のやる気や気合の問題ではありません。

 

 いきなり精神症状や障害の話が出てきて,ちょっとびっくりしちゃったかもしれませんね。でも,もしあなたに症状や障害があることが認められたなら,これらの問題は,適切な処方薬や,周囲からのサポートによって,楽になるかもしれません。

 

 精神科や心療内科では,気分を上げてくれる薬,気分の波を安定させて落ち込みを減らしてくれる薬,やる気が出るようにしてくれる薬,衝動性を押さえてくれる薬などを処方することができます。

 

 また,カウンセリングを受けたり,周囲に手伝ってもらって勉強方法を工夫したりすれば,問題が改善するかもしれません。

 

人に相談しよう

 もしあなたが,やる気が出ないことについて,自分ではどうすることもできず悩んでいるのであれば,まずはあなたのことを否定しない人に相談することをおすすめします。相談することで,これからどうすればよいか,一緒に考えてもらえるかもしれません。

 

 しかし,実はこの相談,必ずしも問題を改善できるとは限りません。なぜなら,脳の問題それ自体は相談では改善できないのと,相談した相手が必ずしも良い対策を思いつくとは限らないからです。

 

 それでも,相談することには意味があります。なぜなら,辛い問題を1人で抱えるよりも,誰かが見ていてくれたり,話を聴いてくれたりした方が,しんどさが軽くなるからです。

 

 また,相談ができる相手を見つけることができれば,その人は,あなたのことを否定しない,あなたの味方になってくれます。勉強に手をつけられないことは,周囲から非難されることが多いので,味方がいることは,精神的安定を保つのに役立ちます。

 

 学校の中でも外でもいいので,あなたを否定しない人,あなたが信頼して話をすることができる人を,根気強く探していただきたいです。

 

 学校の中に信頼できる人がいない場合,お住まいの自治体に,子ども向けの相談機関がある場合があるので,それを探してみるのも1つの手かもしれません。

 

 また,LINEなどを活用した相談を利用してみる方法もあります。電話と違って,話さなくていいのがメリットだと思います。普通に「子ども LINE相談」で検索しても色々見つかるのですが,「お住まいの自治体名(都道府県や市町村など) 子ども LINE相談」で検索すると,あなたの住んでいる自治体のLINE相談を探すことができます。

 

カウンセリングを活用してみよう

 あなたの抱える問題は,もしかしたら,心に関する専門的な知識が必要かもしれません。なので,専門的な知識を持った人のカウンセリングを受けてみるのも1つの方法だと思います。専門的な知識を持った人というのは,臨床心理士や,公認心理師という資格を持っている人のことを指します。

 

 私はあなたに,できれば,「安心してカウンセリングを受けてね」と言ってあげたいです。しかし,本当に残念なことですが,実は安心できないカウンセラーも存在します。資格を持っていても,そういう人はいます。

 

 なので,カウンセリングを受けてみて,自分が辛い,合わない,効果がないと思ったら,カウンセリングは途中で止めても構いません。それでも,自分に合う人を見つけることを諦めないでほしいです。諦めなければ,必ず見つかります。

 

 また,カウンセリングを受けるにあたって,お金の心配がある方もいると思います。そういった場合は,自治体で無料でカウンセリングが受けられる機関(例えば教育相談センターや,子どもを対象とした相談センターなど)がある場合があるので,そちらを活用するのも手かもしれません。また,お金はかかってしまいますが,大学の相談室だと,比較的安価にカウンセリングを受けることができます。

 

心の病院に行ってみよう

 上述したように,あなたが頑張れない原因は,脳の問題かもしれません。うつ状態ADHDのような問題は,放っておくと,より症状が深刻になったり,うつ病などの気分障害に発展してしまったりする可能性があります。

 

 私自身も,大学2年生のときに,勉強もサークルも頑張れないことが原因で,うつ病になりました。何もできなくなり,毎日死にたい気持ちやネガティブな気持ちで過ごすことになってしまいました。大学も,2年留年してしまいました。こんなことになる前に,まだ問題が小さいうちに,早期に対処する必要があります。

 

 脳の問題について,正確な自己理解やサポートを得るために,精神科や心療内科を受診した方がよいかもしれません。

 

 「精神科や心療内科に行くなんて,自分は頭がおかしいのではないか」「自分みたいなのが精神科や心療内科に行ってもいいのだろうか」と思われるかもしれません。

 

 しかし,長い間精神科を受診している私から言わせると,別に精神科や心療内科に行ったって頭がおかしいということはありません。精神科を受診している大半の人は,治療が必要な困りごとがあること以外は,ごく普通の人です。私たちと特別違う人間ではありません。

 

 また,精神科や心療内科は,別に健康でも行っていいところです。そんなに敷居が高い場所ではありません。

 

 とはいえ,未成年だと受診に親の同意が必要になります。親が何と言ってくるか分からないので,大変かもしれません。自分一人では親の説得が難しそうであれば,信頼できる人か,カウンセラーに手伝ってもらって,説明をしてもらうのもいいかもしれません。

 

 また,病院を選ぶ際には,可能であれば養護の先生やカウンセラーなど,信頼できる人から病院を教えてもらうようにしましょう。信頼できない人に病院を教えてもらうのは,お勧めしません。例え親でも,信頼できないなら,可能な限り親に病院を選ばせるのは避けましょう。なぜなら,適当なところ,信頼できない人の都合の良いところを紹介されるかもしれないからです。

 

病院で「問題なし」と言われたら

 それでは,もし病院を受診したとき,「特に問題がない」と言われた場合は,やっぱり自分が怠けているだけなのでしょうか?実は,そうとも限りません。まず,大事な前提として,あなたが困っているのであれば,他の人の助けが必要です。そして,厄介なことに,いくつかの原因があり,病院で問題が認められない場合があります。

 

 まず,病院の方に問題があり,正しい診断がつかなかった場合です。病院が間違えるなんて嘘みたいな話ですが,本当にあるんですね…。

 

 私も高校生のときに,ADHDや何らかの精神疾患を疑い,心療内科を受診しました。そこで病院の先生に,「あなたは健康です」と言われました。しかし,大学生以降に2つの病院にかかったのですが,どちらの病院でも,ADHDの診断がつきました。

 

 最初の病院で診断がつかなかったとしても,もしあなたの根気が残っているのであれば,他の病院でセカンドオピニオンを求めることで,正確な診断がつくかもしれません。別の病院を受診することは,「自分に都合のいい診断を得るためのズル」ではありません。

 

 次に,ADHDのような困りごとのある人の中にも,生活で困っているにも関わらず,病院で診断がつかない,「発達障害グレーゾーン」にあたる方がいます。このような方たちも,適切な周囲のケアを必要としています。グレーゾーンの情報は,調べれば出てくるので,気になる方は調べてみてくださいね。

 

 診断がつくつかないに関わらず,信頼できる人と,自分は何に困っているのか,どういう助けが必要なのかをまとめてみることをオススメします。これは,困っていることを他の人に伝える際に役に立ちます。

 

辛いことを聞いて自分を責めなくていい

 進学校にいると,自分にとって辛いと感じることが,たくさんあるかもしれません。しかし,辛いことを知ったり聞いたりしても,あなたは自分を責める必要はありません。少しずつ,自分の心を守るバリアを張る練習をしてみましょう。これから,学校生活でのいくつかのポイントを紹介します。

 

・平均勉強時間は無視しちゃおう
 進学校では,生徒が勉強時間を回答し,平均勉強時間が公開されることもあるかもしれません。この平均勉強時間ですが,何の意味もない数字なので,無視しちゃいましょう。

 

 平均勉強時間と自分の勉強時間を比べてしまうと,「自分はこんなに頑張っていなくて,なんてダメなんだ」と落ち込み,自分のことが嫌いになってしまいます。それは辛いし,悲しいことですよね。あなたには,あなたに合った目標があります。頑張れる分だけを頑張り,出来た部分を自分で褒めてあげましょう。

 

・大学合格座談会はあなたにはあまり参考にならないかも
 進学校では3月に,難関大学を合格した先輩たちによる,大学合格座談会が行われることもあるのではないでしょうか。しかし,大学合格座談会は,あなたにはあまりオススメしません。なぜなら,傷を負って帰ってくる可能性が高いからです。

 

 先輩たちは,もちろん後輩の力になりたいという善意で,座談会を引き受けています。一方で,本人としては後輩を鼓舞しているつもりでも,「自分はこんなに頑張ったんだと言いたい」「難関大学に合格したことを自慢したい」という気持ちは,全くないといったら嘘になるでしょう。

 

 ほとんどの先輩は,あなたの事情までは考えてくれません。難関大学に合格する人は,努力ができる人が多いので,あなたが頑張れないことに対して想像が及ばないのです。

 

 座談会にどうしても参加したいなら,効率的な勉強方法を聞くためだけに行くと決めましょう。勉強のスケジュールの立て方や,やる気の出し方などは聞かず,頑張ったアピールは無視することにしましょう。

 

・進路集会は無理して出なくていい,途中で抜けてもいい
 進学校では,進路集会が定期的に行われているのではないでしょうか。しかし,進路集会の先生の話が,頑張っている人にだけ話しかけているように感じたり,頑張っていない自分が怒られているように感じたり,自分のことをいないことにされているように感じることがあるかもしれませんね。

 

 進路集会が苦しいときは,無理して出なくてもかまいません。途中で抜けてもかまいません。進路集会を抜けるために,仮病を使ってもかまいません。

 

 ただし,可能であれば,担任の先生か進路の先生,学年主任の先生に,進路集会が辛いこと,どうして進路集会が辛いと感じるのか,あらかじめ伝えておくといいかもしれません。

 

・課題が出せないときつく叱ってくる先生には
 課題を出さなかったり,小テストで点が取れなかったりすると怖い先生,あなたの学校にもいませんか。そういう先生がいると,課題がやれないのが本当にプレッシャーなんですよね…。

 

 そういう先生には,叱られたら悲しいけど,その場をやりすごすために反省した演技だけして,叱られたことは自分の心には入れないと決めましょう。ただしこれは,「課題を期限通りに出さなくていい」という意味ではありません。

 

 そして,もし勇気があるのであれば,信頼できる人に手伝ってもらって,自分は怠けているわけではないこと,自分自身も課題が出せなくて困っていることを,相手に伝えてみる方法もあるかもしれません。

 

 そして,叱るよりもどうすれば課題を期限通りに出せるか,どうすれば小テストをちゃんと受けられるか,一緒に考えてほしいと,相手にお願いしてみましょう。

 

少しでも頑張る方法

 頑張れないと課題が出せなくて困る。自分はもっと勉強を頑張りたい。「どうしたら頑張れるのか知りたい」というのが,あなたが一番求めていることではないでしょうか。

 

 これから,微力ながら,これまで私が学んできた,少しでも勉強を頑張る方法をお伝えします。これらの方法が,あなたのお役に立てれば幸いです。

 

・絶対に達成できる本当に小さな目標を決めよう
 勉強は,始めることが一番大変です。もっと言うと,始めることさえできれば,5割終わったも同然と言ってもいいぐらいです。なので,勉強の始めの始めの一歩を目標にしてみましょう。

 

 例えば,机に座るとか,問題集を机に出すといった,本当に簡単な目標を立ててみましょう。「そんな簡単で,しょぼくて,意味がなさそうなこと?」と侮ることなかれ。実際やってみると難しいから。この一番難しいことを乗り越えることが,勉強する上で最も重要ですので。あなたが思っているより意味なくないですよ,これ。

 

 ちなみに,もしこれが毎日できなくても,落ち込まないように。1週間のうち4日できれば習慣化できると,メンタリストDaiGoさんが言っていました。

 

 失敗しても,自分を責めたり,さらに高い目標で自分を追い込んだりせずに,失敗した自分を労わるとよいです。これもメンタリストDaiGoさんが言っていました。

 

・目標は失敗するもの。失敗することに意味がある
 まず,早く勉強ができるようになるように高い目標を立てたり,短期間で目標を達成しようとしたりすることはおすすめしません。「早く,勉強を頑張れる自分になりたい!」と思い,無理な目標を立てたり,性急に結果を追い求めたりしてしまうと,自分を追い詰めてしまいます。そして,目標がなかなか達成できず,失敗体験が積み重なって,やる気をなくし,自分のことが嫌いになってしまいます。

 

 目標を立てて自分を嫌いになるくらいなら,目標を立てない方がマシです。なるべく,「これだったら達成できる」というような目標を立て,それを実行していくようにしましょう。

 

 それでも,自分が立てた勉強の目標に失敗すると,「自分はどうしてこんなにダメなんだ」と,自分を責めたくなるかもしれません。しかし,実行できる目標を立てるというのは,練習が必要なことです。なので,最初から良い目標を立てられることの方が珍しいのです。

 

 むしろ,良い目標を立てるのに失敗したときは,どうして目標が失敗したのか考えるチャンスです。目標が達成できなくても,自分を責めずに,どうすれば目標を達成できるか,目標ややり方を工夫してみましょう。

 

 先日,このようなツイートを見かけました。

 

 勉強においても,「抵抗なくできそうな目標を考えて,上手くいったら○,面倒臭いと少しでも感じたら△をつける」というやり方で,うまくいく方法を探していくのもアリかもしれませんね。

 

 ただし,気をつけなければならないことがあります。振り返りは,自分が思っているほど,「ここで失敗したことでこの問題点に気づき,こう改善したらうまくいきました!」というように,一直線ではうまくいかないのです。むしろ,失敗して,問題点に気づいたけど,対策が全く思い浮かばない,困った!ということの方が多いです。

 

 そんなときも,「失敗したのに改善できないなんて自分はダメだ」というふうに,自分を責めないでください。そういうときは,一旦問題を棚上げしましょう。棚上げしているうちに,いつか解決策を思いついて,問題が解決できることも,たくさんあります。私なんて,そんなことの連続です。

 

 問題の棚上げは,逃避のように思えるかもしれません。しかし,棚上げしないと,「何でうまくいかないんだ」という沼にハマってしまい,自分が苦しくなってしまいます。「いつか何とかなる」の力は,今の自分の自力よりも偉大で,侮れません。自分でどうにも対処ができないことは,今は棚上げして,未来の自分におまかせしてしまいましょう。

 

・やらなきゃいけないことを細かく分解しよう
 例えば今日,課題が出たとしましょう。そのとき,あなたは頭の中で,「あの課題をやらなきゃなあ」と思い浮かべるはずです。このとき,今やらなきゃいけない課題を,細かく分解して書き出してみるとよいです。例えば,「この宿題には問題が何問ある」,「この作文にはこの手順とこの手順とこの手順が必要」といった具合です。

 

 というのも,やらなきゃいけない課題をただ漠然と,「宿題を終わらせる」「作文を書く」というように認識していると,終わらせるまで途方もなく時間がかかるように感じたり,あるいは,「どうせやればすぐ終わる」とナメてかかったりして,課題を先延ばしにしてしまうのです。

 

 そこで,課題をやるのに必要な作業を分解して,やることリストに書き出して把握すれば,どれくらいやれば終わるのか,正確に理解することができます。また,やることを分解すると,「宿題を終わらせる」よりも,「宿題を1問やる」の方が簡単に感じられるため,1つ1つに手をつけやすくなります。やることリストは,紙に書いてもよいですし,アプリを活用してもよいです。

 

・終わらせるよりも手をつけよう
 勉強をやろうという意識を持つとき,課題を終わらせることよりも,課題に手をつけることを意識しましょう。前述した通り,勉強は手をつけるのが最も大変で,逆に言うと,手をつけてさえしまえば,5割終わったも同然なのです。それほどまでに,物事に手をつけることは難しく,偉大なことです。

 

 また,人間は始めてしまえば終わらせたくなる生き物なので,手をつければつけるほど,課題に取り組むのが楽になります。

 

・1回の勉強時間は短くてもいい,休憩時間は長くてもいい
 周りの勉強している子を見ると,長時間集中して勉強しているように見えて,「自分はこんなに頑張れない」と感じることはありませんか。よく,「25分勉強して,5分休むとよい」だとか,「人間の集中力の限界は90分」だとか,巷では言われています。

 

 ですが,ぶっちゃけこれ,しんどくないですか。私なんて,25分も集中したら,5分では全く休まりません。なにより,25分も続けて頑張りたくありません泣。しかも私は,長時間勉強すると,頭痛がしてきて,心身が勉強をそれ以上受け付けなくなるタイプです。

 

 長時間勉強するのが辛い人は,1回の勉強時間を短くしたり,休憩時間を人よりも多く取ったりした方が,勉強に手をつけやすいと思うのです。なので,集中する時間を他人と比較せず,自分なりの勉強時間を設定しましょう。

 

・あなたなりの工夫を考えてみよう
 あなたはもうすでに色々な方法をお試しかもしれませんが,勉強のやる気を出すために,あなたに合った,あなたなりの創意工夫をしてみましょう。

 

 例えば,私の場合,家だとどうしてもスマホをいじって寝転んでしまうので,外出して勉強するようにしていました。

 

 また,大変ばかばかしい方法なのですが,ケーキをエサにして,ケーキを食べながら勉強して苦痛を和らげる方法や,カラオケに行って勉強して,嫌になったら2曲歌ってストレス解消して,また勉強に手をつける方法などもやっていました笑。「こうしなければならない」にとらわれず,自由な工夫をしてみましょう。

 

あなたはよくやっている

 あなたはここまで,勉強のやる気が出ないことを悩みぬいて,どうすればいいか必死に考えてきたのだと思います。その努力は,他の人からは目に見えないかもしれません。しかし,私は,あなたがここまでよく頑張ったと,断言します。

 

 他人に認められない頑張りは,苦しいものかもしれません。しかし,それは必ず,あなたの役に立ちます。

 

 私も,勉強のやる気がどうしても出なくて苦しみました。「みんなはどう勉強するかで悩んでいるのに,私は『勉強する』というスタートラインにすら立てていない」という,屈辱がありました。

 

 だからこそ,何が良い方法がないか,必死で調べたり,試したり,考えたりしました。頑張れない自分の生きる意味についても,じっくり考えました。その結果,こんな力が身につきました。

 

①自分の役に立つ道具・方法・情報を調べる力
 GTD,TaskChute,タスクぺディア,Habitica,みんチャレ,yPad,等々…。様々なツールを試しました。やる気UPにつながりそうなツールや書籍を,インターネットや書店で探してきては,片っ端から漁りました。本気でやる気を出せるようになりたかったので,血眼になって方法を探していました(その時間で勉強しろ,というのは禁句です。苦笑)

 

 その甲斐あってか,調べ物をすると,自分に合ったモノ,本,情報,イベントなどに,ぴったり出会うことができます。

 

②自分なりのやり方を構築する力
 人から教わった方法を試すうちに,どうしても自分に合わない部分にぶつかり,その方法がうまくいかないことがあります。そんなときに,「こういう風に方法を変えれば,うまくいくのではないか」というのを,あるときはウンウンと考え,またあるときは,問題を棚上げしているうちに急に閃いていました。そういった試行錯誤を,何度も繰り返しました。そのおかげか,今の仕事でも,「この問題は,こうすれば解決するのでは」と,つい考えてしまいます。

 

③やりたいことに少しでも手をつける力
 自分の役に立つものを調べ,それを吸収して,自分なりのやり方に変えることで,やりたいことに手をつけるのが,前よりも格段に楽になりました。

 

④自分自身に語りかけて心を安定させる力
 「自分はなんてダメなんだ」と自分を責め続けると,絶望してしまいます。それでも生きていくためには,その絶望を乗り越える必要がありました。そこで,いろんな人に相談し,助けてもらって,応援してもらいました。

 

 また,自分を助けることを求めて,生き方に関する本も読みました。ヴィクトール・E・フランクル著「夜と霧」からは,「頑張れないから/夢を叶えられないから私はダメ」ということよりも,「頑張れない/夢を叶えられないなりに,今自分はどうするか」の方が,人生の価値を決める上ではるかに重要だと学びました。

 

 ハ・ワン著「あやうく一生懸命生きるところだった」からは,他人に追いつけず,理想通りにならない人生にも価値があり,自分を追い詰めすぎなくてよいということを,学びました。

 

 人や本に頼ることを積み重ねて,自分を否定する言葉を,自分を認める言葉に,少しずつ書き換えていきました。

 

 これらは,私なりに「頑張る」ための努力をした結果です。あなたには,また違った,あなたなりの結果が伴うのだと思います。あなたの「頑張るための努力」は,決して無駄にはなりません。

 

 まずは,あなたが健やかでいられることを最優先にしてください。その上で,信頼できる他の人と,なるべくたくさん繋がり,助けを借りることができれば,心強いですね。そして,本当に小さくて達成できそうなことから,手をつけてみましょう。

 

 最後に,発達障害の方向けのノウハウ本の作者である,借金玉さんのツイートで,これは重要だと思ったものを紹介します。

 

 たとえ今日がダメだったとしても,「今日はダメだったけど,明日はやろう」という心構えは,どうにもならなさの中で,少しでも前を向く上で,とても重要なんですね。

 

 そして,自分の心身を守るために,「休む」と決めることもまた,立派な努力なのです。それができたあなたは,先生や友達に褒められなかったとしても,とても頑張っています。

 

 自分の力でどうにもならないことは本当に多いですが,それでもできることをまず1つから,お互いにやっていきましょうね。



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